「U2 ザ・ベスト・オブ 1980−1990」 98年 評価3.5
1980年代以降最大のロック・バンドといえば間違いなくU2である。20年以上にわたりメンバーの変更が全くなく、一般人にも、評論家にも絶賛されつづけているバンドは今の時代非常に稀有であり、今後二度と現れることすらないだろう。
そんなU2だが、もともとロック・ポップスが好きな私が好んで聞くようになったのは87年の「ヨシュア・ツリー」からである。84年の大ヒット曲「プライド」を擁するアルバム「焔」までは、研ぎ澄まされた、若く荒々しいロックという感じでいまいち好きになれなかったのである。ロックの伝道師と化した「ヨシュア・ツリー」からは余裕と色気が生まれたため、それ以降は聞くようになった。そして、私の一番好きなアルバムは実は91年の「アクトン・ベイビー」であり、このアルバムのディケイドは実はそんなに大好きという頃ではないのだが、1990−2000のベスト盤が出たのでついでに買ったものである。
U2のアルバムは全てがコンセプトアルバムであり、逆に、単曲として耳に残る、好きな曲は少ないというのが個人的な感想で、どの曲もいいというのはそれこそ「アクトン・ベイビー」だけである。なので、ベスト盤というのは私にとっては、ことU2というバンドとしてはとてもお買い得感の高いものである。
さて、本作の内容だが、「焔」以前の4作からは6曲が選曲されているが、あまり好きではない時代で、正直、短調さを感じてしまう。それ以降の「ヨシュア・ツリー」から3曲、「魂の叫び」からは3曲で、計14曲構成である。初期の曲は好きにはなれず、ベストとしてはいまいち通して聞きづらく、残すかどうか微妙ではあるが、U2の凄さというか、カリスマを感じることはきる。エッジのギターに代表されるように一聴しただけでU2とわかるサウンドも凄いし、何しろ歌詞の奥深さに圧倒される。いまどきこんな詞を書けるミュージシャンがいるだろうか。この頃のU2の高尚さについていけない人も多いだろうが、その後「ZOOROPE」(93年)「POP」(97年)という問題作を発表したようにU2自身は高尚になろうとしたわけではない。それは、このベスト盤のそれぞれのシングル向けロックのスピード、ロマンチズム、エロチズムを感じ取ればわかるはずだ。